老紳士
電車に老紳士はいた。
およそ見かけからは、
失礼ながらそう見えなかったが。
私は楽器を抱えて電車に乗る時は、
車椅子スペースの扉から乗る。
大きな荷物を持っている時は、
そのスペースに行くべきだと思っている。
優先順位は車椅子、ベビーカーだが、
いなければその次は大荷物の者。
その場所は、人がよくたまる。
そして、大荷物の人が乗ってきても、
大概退かない。
気にもしなければ、目もくれない。
おいおい、ここどうぞって退くのが
男だろうに。
紳士はもうおらんなと思ってたら、
今日いた。
こっち置きよと、
すぐに反応したおじいさんが。
老紳士だよ。
かっこいいとは、
あのおじいさんのことを言う。
ありがとうございますと、言えた。